「なー、相沢」

「あん? なんだよ北川」

「俺は日々思うわけだ」

「何をだ」

「考えてもみろ、俺達はそろそろ最上級生になるわけだ」

「そうだな」

「1年なんてあっという間だ、そう思わないか?」

「まぁ、言われてみればそうかもな」

「しかし今のご時世、自分から進んで何かをしようとする人間は希少民族になってしまった。もはや絶滅寸前だ」

「……ツッコミどころはあるが、まぁ言いたい事はわかる」

「そこで俺は考えた。この怠惰な日々から抜け出す方法を」

「じゃあな北川。出来れば今後一切、俺に近付くなよ」

「おいおい相沢、そう言うなよ。お前にも役得はある」

「……例えば?」

「それはやってみなきゃわからんなぁ」

「おう名雪、帰ろうぜ」

「あ、うん。そうだね」

「おいこら相沢、なんでこう、いいところで爽やかに去ろうとする? あ、おい! 待てって言ってるだろ!」






























 B.C. 〜バ・カーポ〜































「というわけで、俺達は今商店街に来ている」

「お前が無理矢理連れてきたんだろ……」

「まぁ、そう固い事を言うな。同志よ」

 いつ、俺とこいつが同志になったのだろうか。その部分を問い詰めてみたいものである。

 とまぁ、『色々』あって、俺は北川に商店街へと連れてこられたわけだ。

「いやー、それにしてもよく来てくれた相沢」

「お前が言うな」

 びし、と北川の顔面に軽く裏拳を炸裂させる。

「ぐぁっ! これは、あの幻の秘拳……!」

「じゃあな北川、そこで寝てろ。できたら一生」

 踵を返して、屍(元・北川)に背を向けた。

「甘いな相沢、こういうこともあろうかと、すでに手は打ってあるぜ」

「は?」

 いつのまにか奴は俺の前に回りこんでいて、不敵な笑みを浮かべていた。

 あの、北川さん。あなたの今の動きはすっごく物理現象に反しているような?

「商店街を行き交う人々よ、見よ! これぞ、この少年、相沢祐一が苦闘の末に勝ち取った数学にじゅ……」

「さーあ、北川! とっとと行こうぜ!」

 俺はまだ明るい空に誓う。

 いつか、証拠一つ残さずに、絶対にこいつを埋めてやろうと。校庭にでも。






























「なんでお前が持ってるんだよ、それ」

 あれはちゃんと教室のゴミ箱に笑顔で放り込んだはずだ。

 今を生きる俺にとっては、過去を示すあんな紙切れは必要ないというわけだ。

「拾った」

 しかし回答は極めて普通だった。奇抜なところなど何一つない。

「いやさー、ゴミ捨て当番がゴミ箱を運ぶときに落ちてきたんだよ。俺ってツイてるよなぁ♪」

「お前の幸せの代わりに、俺には不幸がついて回ってるけどな」

「まぁ怒るなよ相沢。協力してくれたら返してやらないでもない」

 殺す。

 俺の心の中に、確かな殺意が宿った。

「……んで、何をやればいいんだ?」

「おお! 遂にやる気になってくれたか!」

 今だけな。

(あの答案さえ取り返せば、後はどうにでもなる!)

 黒い。我ながらなんという黒さだ。

「ああ、因みにこれのコピーはたくさんあるからな。俺を倒しても、支部のみんなが俺の遺志を受け継ぐシステムになっている」

「……」

 こいつは本当に高校生なのだろうか。つか、支部ってなんやねん。






























『華の高校生活といえば! やはり彼女との甘いひとときだ!』

 見事なまで、北川の考えは予想通りだった。

 くそぅ、あの答案さえ奴の手になければ……!

「今頃は、家で有意義に時間を使っているというのに」

「諦めろ相沢、これも運命だ」

 ぽむ、と北川が俺の肩に手を置く。

 がしっ。

「お?」

 くるり。

「おお?」

 ごぎん。

「おおおおおおおおおお!?」

 俺の流麗なアームブリーカーをくらい、北川はまだ雪が残る地面をごろごろと転がりまわる。

「ふっ、正義は勝つ」

「ぼ、暴力反対……」

 ぴくぴくと愉快に痙攣しつつ、北川は口からカニよろしく泡を吹き始めた。

「とまぁ、こんなわけで、いざナンパだ、相沢!」

 そして3秒で復活する。誰から見ても人間業じゃない。

「この妖怪め……」

「ふっ、何とでも言え。とにかく、行くぞ、相沢」

「……」

 もう反抗する気も起きなかった。






























「さあ相沢、栄えある一番手はお前がつとめるのだ!」

「……はぁ?」

 はっきり言って、すっごくかったるい。

「普通はお前が行くんじゃないのか?」

 そう、それは当たり前の疑問だ。

 しかし北川はちっちっちっ、と、人差し指を振ってみせた。

「まずは尖兵を潜入させるのが大事なのだよ、相沢クン」

「殺すぞ」

「はっはっはっ、お前に出来るか?」

 ぴらぴらと、俺の目の前であれを揺らす北川氏。

―――ああ、こんなにも人に殺意を覚えるなんて。

 今まであっただろうか?

 いや、ない!(反語)

「ほーらほら相沢く〜ん、とっとと行ってこいよ〜」

「お前、覚えてろよ」

 無限の殺気をこめた言葉を奴に吐いて、俺は人込みへと突入した。






























「んー、どうしようかな……」

 1:このまま逃げる

 2:おとなしく奴に服従する

 3:めそ

 ……最後のはなんだろう。

「あ、祐一さんじゃないですか?」

「ほえ?」

 ああもう誰だ。今こんなにも俺は困っているのに。

「……って、なんだ、栞か」

「はい、栞ですよー」

 栞は俺の姿を認めるやいなや、たたた、と嬉しそうに駆けてきた。

 さながら、その様子は―――。

「わんこ」

「はい?」

「いや、こっちの話」

「……それで祐一さん」

「ん? どうした?」

「……なんで頭撫でてるんですか?」

 はっ!?

「い、いや、これはだな栞、けしてお前がわんこっぽかったとかじゃなくてだな」

「は、はぁ……」

 俺は頭を素早く栞の頭の上から引っ込めて弁解をする。

 しかし、自分でも何を言っているのかがよくわからないのであった。

「そ、それで祐一さんはここで何を?」

「いや、それがなぁ……」

 ……ちょっと待て自分。よく考えろ。

 ぴーんと、一瞬の閃きが脳裏を駆け巡る。

―――ナイスアイディア自分!

「栞、今時間大丈夫か?」

「はい、暇なので商店街をぶらぶらしていたところです」

「よし! それなら今すぐ遊びに行こう、つか行くぞ」

「え? え? え?」

 栞の返答を待たずに、俺は彼女の右手を握り締めて歩き出した。

 ふっ、これなら北川も文句あるまい……。






























「……あれ?」

 当初の予想と違い、祐一は見事に女の子をゲットしていた。

 まぁその女の子は栞なのだが、北川は気付いていない。

「ふむ、なるほど。よくわかった」

 くっくっくっ、と喉で笑う。すると彼の周囲はたちまち、突然笑い出した少年への恐怖の感触に包まれる。

「つまり! 相沢に出来て俺に出来ないはずはない!」

 何故そこまで思えるのか不可解だったが、とにかく北川は行動を始めた。

 怪しさ爆裂120%(ポイントカードで5%増し)の動きと目つきで。






























「おはよー香里ー」

「おはよう名雪、今日は早いのね」

「それは俺の起こし方がいいからだな」

「う〜、頭にチョップのどこがいいの〜」

「そうでもしないと起きないだろ」

「うにゅ〜」

「ああ、そういえば相沢君」

「ん? なに?」

「栞のことなんだけど、昨日、家に帰ってきてからずっと浮かれっぱなしなんだけど……なにか知らない?」

「んー、昨日商店街でばったり会って、少し歩いたんだけど」

「……よぉく解ったわ」

「へ?」






























「いてて……」

 傷だらけの自分の顔を鏡で確認して、北川はばふっ、と布団と身を投じた。

「どこでしくじったかなぁ……」

 時計の針はすでに学校に赴くには絶望的な時間を指している。

「やはりいきなり捲し立てるように迫ったのがマズかったか」

 根本的に間違っているような発言をして、北川は近くに置いてあるポケットティッシュを手に取って、

―――ちーん。

 豪快に鼻をかんだ。

「今日は休んで、また明日再チャレンジだ」

 ぴらぴらと『例の紙』を空気の中に振りながら、北川はにやりと不気味に笑った。






























 戦績(?)

 相沢祐一、栞のハートをげっちゅ。

 北川潤、名誉(?)の負傷(顔から足の先までいたるところに)。




































 終わってください






 後書きRELOAD


 えーと、これは一体何なのでしょうか(ぇ
 タイトルに意味がない馬鹿SSということで一段落(意味不明
 D.C.を昨日制覇しましたが、影響を受けたなんて事は…いや、ちょっとあるかも(マテ
 まぁそのヒロインの中に「天枷美春」っていう犬っぽい後輩キャラがいるわけなんですよ。
 スタイルもしおりんに似たり寄ったりで(ばきゅーん)…ばたり。
 なにはともあれ、読んでくれた人にマリアナ海溝よりも深い感謝とお詫びを込めて。


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