髪を切ろう。

 丁度、季節も春から夏へと変わっていく境目。

 髪を切ろう。時期的に丁度いい。

 暑さで汗ばんだら、長いままだと手入れが大変だ。

 だから髪を切ろう。

 もう、長いままである必要はないのだから。

 髪を切ろう。夏までは部活があるし。

 そうだ。それ以外に、髪を切る理由なんてない。

 ない、のだ。

 ない、はずなのに―――。






























 髪を切ろう。































 長く、長く。本当に長く伸びた私の髪。

 触ってみると柔らかい手触りを、それらは私にもたらした。

 長く、長く。ずっと伸ばしてきた私の髪。

 言うなればこれは、成長の証ともいえる。

 長く、長く。長い間思い続けたあのひと。

 7年間という溝は、予想以上に深かった。

 永く、永く。誰にも負けない、私の永い想い。

 上手くいくと思ってた。もう一回、やり直せるんじゃないか、と。

 淡く、淡く。限りなく透明に近い、私の純粋なきもち。

 だけど、声を聞く度胸躍らせたあの日々も、すでに色褪せてしまった。









 もう彼の隣に私はいるべきじゃない。

 必要なのは『あのひと』。私じゃないもの。

―――だからもう、離れるの。

 これからは普通の「ともだち」として、過ごしていこう。

 いつか、彼がいなくなるまでは。






























 髪を切ろう。もう、伸ばす必要もない。

 髪を切ろう。もう、違う季節がやってくるから。

 髪を切ろう。もう、さよなら。

 髪を切ろう。一緒に持っていってもらおう。





 私の中で未練たらしくうごめくこの想いを。





 私が髪を切る理由なんて、そんな大層なものじゃない。

 単に邪魔になっただけ。

 何故、邪魔になったのかはわからない。





 ただ。





 あのひとの隣に、私じゃない誰かが現れたときから。





 この長い髪が急に、鬱陶しく思え始めた。





 考えてみれば、何故私は髪を伸ばし続けていたのか。

 ただただ、下にぶら下げるだけの髪を。

 冷静に分析すると、やっぱり鬱陶しいだけの代物だ。

 じゃあ、なんで私はこの髪を伸ばしっ放しのままで、放置したのか。





 7年前の私は髪を三つ編みにしていた。

 理由なんて大袈裟なものはない。

 ただ、お母さんが「こうすると可愛いわよ」って、私の髪を結ったあとに言ってくれたから。

 多分、その時の私は、心の底から嬉しかったのだろう。

 切るなんてことは愚かな行為として、微塵にも考えたりはしなかった。

 言うなれば、この長い髪は私の過去の部分。






























 だから、切ってしまおう。






























 柔らかな風が吹いた。

 だけど、ふわりと舞い上がる髪は、すでに私にはない。

 肩の長さまで短くした髪は、ただなびくだけ。

 真上には太陽。もう、夏はすぐそこまで来ている。






























 すでに葉っぱを緑色に染めた木々が作り上げた空間の下を歩く。

 まだ風はやまない。私の髪は、風任せに揺れる。

 みんなはどう反応するだろうか。実は少しだけ楽しみで、胸の鼓動は少量だが増していた。

 髪を切ること自体は、別に大したことじゃない。重要なのは、その行為によって何を得たのか。

―――私は。

 おそらくだが、抽象的だけど得たものはあった。言葉に表すのは難しい。

 とりあえずは早く家に帰ろう。

 そして。

 彼に私を見てもらうのだ。

 それからが私の新しい一歩だと信じて。





 髪を薙いでいた風はいつの間にか消えていた。










 終わり






 ジョジョの奇妙な後書き


 意味不明な短編第三弾!(ぇ
 お目汚しすいません(土下座)。ごめんなさいごめんなさい。
 というわけで、名雪のシリアス(?)でした。
 名雪はずっと祐一が好きだったということなので、もし他の娘とくっついたら…ということです。
 うわ、そんなこと一行上で書いておいて意味不明だ(死
 それでは、読んでくれた人に無尽蔵の感謝を込めて


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