そよぐ風。

 揺れる草木。

 一面緑の世界。

 ものみの丘。

 そこに、二人の男女がいた。


「んー、相変わらずここは風が気持ちいいなあ」

「そうですね…」


 んーっと伸びをする少年と、髪を押さえながら静かに呟く少女。

 相沢祐一と、天野美汐である。


「なんだよ、天野。お前は感情表現が乏しすぎるぞ」


 無表情に呟く美汐に、げんなりと祐一は呟く。


「見慣れてますから…この丘の風景は」


 それでも彼女は澄ました顔で祐一を見つめながら、小さく呟くだけであった。





 そんな彼女に、祐一の心が騒ぐ。

 なんとかしてこの女の表情を崩してやる、と彼の根っからの性根が動き出した。

 そしてこういうことに関しては、天才的に頭が働くのが相沢祐一である。

 瞬時に脳は演算した答えをたたき出し、身体はすぐにそれを実行に移っていく。


「ったく…まあ、いいや。天野座れ」

「……はい?」

「気持ちいいから座って話をしおうぜ」

「…そうですね」


 いきなりぶしつけの要求に一瞬美汐は戸惑うが、すぐにいつものことだと諦めた様子で納得し、いつも通りのおばさん臭い仕草でゆったりと地面にお尻をつけた。

 それは祐一の思ったとおり、足を横に折って座る正座を崩したような姿勢だった。

 キッピーンと祐一の目が光る。




「…あ」




 そのことに美汐が気付き、しまったと慌てて動こうとした時にはもう遅かった。

 祐一はおもいきりダイブして、彼女の膝上に頭を乗っけてきたのだ。


「きゃっ…!? あ、相沢さん……?」


 さすがの美汐も驚いたようなような様子で彼の顔を覗き込む。

 祐一はしてやったり、というような表情で目をつむり、ニヤニヤ笑いながら独り言のように呟いた。


「んー、やっぱり気持ちいいな。一度やってみたかったんだ、だだっ広い野原で、好きな女の子の膝枕の上で二人きりって」


 その言葉に、美汐は珍しく過剰に反応する。


「え、あ、あの……相沢、さん? そ、その……好きな女の子って……あの」


 何やらわずかに頬を少し紅潮させてあたふたと言う美汐。

 だが次に聞こえてきた彼の返事は、とんでもなく自分の予想を裏切るものだった。


「……くー」

「……あいざわ、さん?」


 膝上の少年は、あろうことか既に寝息をたてはじめていた。

 そんな彼に、呆れて、苦笑して、ため息をついて……それでも美汐は穏やかに微笑む。


「もう…勝手な人ですね……。自分の言いたいことだけ言ってしまってさっさと寝てしまうのですから…」

「……すーすー」

「……私の気持ちも……ちゃんと知って欲しいのに……」

「…ん、んん……あまのー……」

「…あら、寝言ですか?」


 慈愛の母のような笑みをうかべて、優しく彼の髪をなでる美汐。

 それをくすぐったそうにしながらも、いつでも唐突に彼は爆弾を投げてきてくれる。





「……愛してる、ぞ………美汐…」





 言葉に、驚き目を見開く美汐。

 ゆったりと目じりを笑みに変えながら、彼女は静かに呟く。



「…………。……はい、私もですよ……祐一さん」



「んん、嬉しいぞ……天野」

「……相沢さん、起きてらっしゃるのですか?」

「俺は寝てるって……ぐー………」

「……ふふふ」







 微笑み、彼の髪をかきあげながら、美汐はいつまでも幸せそうに笑っていた。








後書きる


はい、とりすさん作短編第四弾です、しかもみっしー!(落ち着け
らぶらぶっていいですよねー(黙れ
つかみっしーはあれですね、さゆりんに匹敵します(何が
それではありがとうございましたー。

戻るんだおー