Inner Heart


『〜〜〜・・・♪』

テレビからは、流行の歌が流れる。

それを聞き流しながら、あたしは在り来たりの女性向雑誌を床に投げ捨てる。

ベッドの上で寝転びながら、ぼーっとしてみる。

特にすることも無く、時間だけが過ぎて行く。気が付けば、既に日付は次の日だ。

夕飯も食べたし、お風呂にも入った。もう、やることは無いだろう。

「あ・・・予習・・・。」

呟きこそしたものの、やる気は起きない。

もう、今日は寝よう。

そう思うが否や、あたしは目を閉じた。





まだ、雪が残る道を歩いている。

勉強道具も持ったし、ちゃんとそれを入れた鞄もある。忘れ物は無い筈だ。

「あ・・・今日確か体育・・・。」

戻るのも、面倒だ。今日は、見学にしておこう。

そう思い、あたしは学校へと進んで行った。





「・・・・・。」

窓側の席で、何となく外を見つめる。

何かがあるわけじゃない。かと言って、無いわけでもない。

キーンコーンカーンコーン

予鈴が響き、続々とクラスメイト達が集まってくる。

予想通り、あの二人の姿は無い。

「なぁ美坂、あいつら今日も居ないのか?」

「そうみたいね。」

キーンコーンカーンコーン

暫くして、本鈴が鳴り響いた。

多分、今頃・・・

「いい加減に早く起きろ名雪ぃいい!!」

「努力はしてるよ〜。」

・・・ほら、来た。

がらっ

「あー、席に着け。」

「ま、間に合った・・・か?」

「間に合ったみたいだね。」

石橋が入ってくるとほぼ同時に、あたしの親友とその従兄妹が教室へと入ってきた。

一方はのほほんとして席に着くが、片割れは息も切れ切れ。

「おはよ。今日も健康的ね。」

「好きで・・・やってる・・・わけじゃない・・・。」

彼・・・相沢祐一は、ぐったりと机に身を伏せている。

ここで、少し残酷な事実を教えてあげるとしよう。

「相沢君、一時間目は体育よ。」

「・・・香里、俺は耳がおかしくなったのか? 聞き間違えたみたいだ。」

「だから、体育。」

あたしが、少し強調して言うと、彼は絶望的な顔になる。

「今日が命日になるかも・・・。」

「葬式は行って上げるわ。」

そうこうしてる間に、HRは終わっていた。

皆が、一斉に席を立って行った。





ここはゆったり出来る空間なので、あたしのお気に入り。

屋上のフェンスから、走っている親友を見る。

「ほんと、走ってる時だけ別人よね。」

それと同時に、寒い中ご苦労様と労いの念も浮かんだ。

「何だ、香里も見学か?」

「・・・え?」

そこには、体育の途中の筈の相沢君が居た。

しかし、着ている服は制服だ。

「相沢君、サボり?」

「いや、ただ単に体操服を忘れただけだ。」

偶然と言うのは、ほんとにあるものだ。

「奇遇ね、あたしも、理由はそれ。」

「そっか。」

そう言って、あたしの隣に並ぶ。背の丈の差は、凡そ20cm弱か。

「空は広いよな。」

唐突に、変なことを言うのが相沢祐一という人間だ。

まぁ、とうに慣れてしまったが。

「そうね。」

「まるで、俺の心のようだ。」

「自分で言ってれば世話無いわね。」

「う・・・香里、酷いぞ。」

「冗談よ。半分。」

すると、相沢君はふっと笑った。

「最近、元気無いな。」

「・・・そう、かしら?」

「そうだろう。」

時々、彼の言葉は物凄く的を得ていることがある。

確かに、最近の自分はおかしい。

自分のやるべきことをやった後でも、何かを忘れているような感覚に囚われる。そして、何か一つを忘れてしまうと言うことも併発している。

だから、体操服を忘れたり、予習が出来なかったりする。

詭弁と言えば、それでお終いだ。

「何か、あったのか?」

「いえ・・・特に心当たりは無いけど。」

心当たりが無いのが、厄介だ。

でも、彼の顔を見ると何故かその感覚はその時だけ消え失せる。

そして、少しだけ心拍数が上がる。

風邪ではない。熱は平熱だ。

「でも、良かったよ。」

「何が?」

「さっき、いつも通りの香里だったしな。」

「何よ、そのいつも通りってのは・・・。」

「言葉通りだ。」

それは、あたしのお得意のセリフなのに、あっさりと盗作されてしまった。

まぁ、別に構わないのだが。

「お、そろそろ授業終わるな。」

「・・・そうね。」

グラウンドでは、既に女子達が点呼を受けている。

彼との時間がもうすぐ終わるのだと認識すると、急に胸が苦しくなる。

何故だろう。

「ほら、行こうぜ香里。」

「・・・ええ、そうね。」

そして、彼はあたしに手を差し伸べた。

「・・・何のつもり?」

「いや、単に手を繋ごうとしているだけだ。」

「何で?」

「繋ぎたいからだ。」

最早、何を言っても無駄であろう。

だが、結構悪い気はしないのだ。寧ろ、喜びすら沸き上る。

「・・・仕方ないわね。ほら。」

「ああ、サンキュ。」

手を繋ぎ、あたし達は屋上を去った。

ここから、教室までは五分とかからない。

だけど、戻るまでの時間はやたらと長く感じた。

何故だろう。

でも、楽しかったから良しとしよう。

だけど、疑問を氷解させないのは納得いかないので、帰ったら栞にでも聞こうと思う。

この胸に生まれた、甘い疼きの正体を。

終わり


後書き

疾「意味不明で行こう!」

七「勝手に逝ってこいいい!!(どばきぃ)」

疾「へぶりゃっ!」

七「久々の短編ね〜。」

疾「おいこらななぴー! 何しやがる!」

七「単なるツッコミよ。ツッコミ(にやそ)。」

疾「ツッコミにしては、威力が凶悪過ぎるぞ・・・。」

七「何だって?(にこ)」

疾「なっ、何でも有りませぬ!」

七「ふっ、弱者め。」

疾「・・・キャラが違いませんか?」

七「き、気のせいよ。」

疾「そうかなあ・・・。」

七「何? 文句ある?」

疾「ありませんよ。あるわけないじゃないですか。」

七「それでは、また会いましょう〜。」

疾「ではでは〜。」

ちゃんちゃん



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