プロローグ
 駅前のベンチで泣く男の子。 
 雪で作った兎を手に笑う女の子。 
 俺はこの光景を知っている。 
 女の子は俺のいとこの水瀬名雪。 
 男の子は――――俺だ。 
 俺はこの光景を7年間忘れていた。 
 いや、7年前の出来事を全て忘れていたんだ。今日の今まで……。 
 全てを思い出した俺は、この光景をまるで第三者のように見ている。 
 出来るなら、もう見たくない。この後、幼い俺が名雪にした行為のことを考えると。 
 泣きじゃくる7年前の俺に名雪が色々話しかける。 
 そして、あの最後の一言を―――― 
「わたし……ずっと言えなかったけど……」 
 やめろ…… 
「祐一のこと……」 
 やめるんだ、名雪…… 
「ずっと……」 
 瞬間、幼い俺は名雪が差し出した雪兎と、名雪の気持ちも一緒にはねつける。 
 気長に笑顔の続けようとする幼い名雪の姿に、俺は胸が苦しくなる。 
 可能ならば、幼い俺を殴り飛ばしてでも、名雪に謝罪の言葉を言いたかった。 
 だが、それも無駄だ。 
 これは俺の記憶が見せる夢みたいのものだから。 
 記憶はまだ終わらない。 
「明日、もう一度ここで会ってくれる?」 
 それは、果たされる事無い約束―― 
 俺の最大の罪。 
「わたし……ここで、ずっと祐一のこと、待っているから…………」 
 ごめんな、名雪…… 
 音にならない声で、俺は何度も謝罪の言葉を述べる。 
 それがたとえ彼女に届かなくても。 
 俺は再び雪の降る町に戻ってきた。 
 あの日、名雪と最後に会った駅前のベンチに座る俺。 
 そして、物語は始まる。 
 俺と名雪の止まった7年間の時間がゆっくりと動き出すように。 
 今の俺に名雪に出来る事は―――― 

名雪を俺の彼女にする事だ! うむ! 絶対そに違いない!!

(タイトル) ≪名雪に首ったけ!≫
 今、奇跡の街がしょうーもない事に巻き込まれようとしていた…………  やれやれ。