はねつきDEゲッチュー!!



「第一回お年玉争奪杯! はねつきバトル開催だぁぁっ!!」
「「「「お―――っ!!」」」」
 説明しよう!
 水瀬家に集まったいつものメンバーが、ひょんな事からはねつきで遊ぶ事になったのだ
が、ただ遊ぶだけではつまらないとの俺の案に、全員が秋子さんから貰ったお年玉を優勝
者が総取りするというこれまた俺の案に、一同大盛り上がりだ。
「……十万円……十万円……ふっふっふ」
 北川の奴が、何やらブツブツ呟いている。表情もあっちの世界に逝ってるし……
 それもそうか。
 秋子さんから貰ったお年玉袋には、1万円札が入っていた。他の皆も同じ額が入ってい
たようだ。(秋子さん、太っ腹過ぎです)
 それが十人分だから十万円ってな訳だ。
 北川以外の者も、やけに闘志を燃やしている。
「うぐぅ、タイヤキがいっぱい買えるね」
「肉まんとマンガがいっぱい……うふふ♪」
「暫くはアイス三昧の日々ですね。幸せです」
 お子様軍団は、相変わらず単純だ。
「……佐祐理、手加減はしないから」
「あははーっ、佐祐理も本気出しますから、舞も手加減無用ですよ」
 元上級生コンビも、闘志剥き出しだ。(ぱっと見た目はそうでもないが)
「とりあえず十万は貯金ですね」
 天野はやはりと言うべきか。
 そして、北川と並んで逝っちゃってる人物がもう一人。
「栞と二人っきりで旅行……そして同じ部屋で…………ふっふっふ」
 栞のピンチだ。
「祐一! 悪いけど、イチゴサンデーの為に負けてもらうよ」
 名雪はいつにも増して、ハイテンションだ。使い道もお約束だし。
「そうか。でもな、それならシードの北川と秋子さんを倒さないとな」
「うぅ〜」
 はねつきの戦いは、トーナメント形式で行われる。
 男である俺と北川、それと何故か参戦の秋子さんはシードになっていた。




 そんな訳で、それぞれの欲望渦巻く中、仁義なき戦いが幕が切って落とされた。




 〜 1回戦第1試合 〜  沢渡真琴 VS 倉田佐祐理

「こう見えても佐祐理、運動神経いいんですよ」
「見せてあげる、すーぱー真琴の実力を!」
 一見、余裕の佐祐理さん。
 そして何の漫画を読んだかバレバレの真琴。
 結果は――
「あうーっ……強すぎ……」
「あははーっ、勝っちゃいました」
 佐祐理さんの圧勝だった。
 そして敗者の真琴は、佐祐理さんに墨を塗られている。
 はねつきのお約束だもんな。
「うむ。まるで某惑星の王子みたいだぞ」
「真琴はブタじゃないもん!」
 真琴の額に『肉』の文字が、輝いていた。


 勝者:倉田佐祐理




 〜 1回戦第2試合 〜  美坂栞 VS 美坂香里

「まさかお姉ちゃんと戦うなんて……」
「これも運命かしら……」
 姉妹対決となった第2試合。
 結果は――
「予想通り、香里の完全勝利か……」
「それはどういう意味ですか、祐一さん!」
「もぐらたたきで実証済みだからな」
「そんな事言う人、嫌いです!!」
 そんな栞は、香里から頬に丸印を描かれていた。
「ふふっ、ピカ○ュウみたい」
「お姉ちゃんも嫌いっ!」


 勝者:美坂香里




 〜 1回戦第3試合 〜  水瀬名雪 VS 川澄舞

 この試合は、舞の勝ちだった。
 と言うか、名雪が試合前にいなくなっていた。
「香里、始まる前に名雪に何か吹き込んでたろう」
「あら。別に私は、テレビの新春特番で猫の特集やってるって言っただけよ?」
「…………確信犯め」
「ライバルは少ないに限るわ。
 だって名雪って、バトミントンとか、凄く巧いのよ」
「さー、次ぎ行ってみようかぁ」
 この後、香里は名雪におもいっきり怨まれていたのは言うまでもない。


 勝者:川澄舞




 〜 1回戦第4試合 〜  月宮あゆ VS 天野美汐

「ねぇ、美汐……その羽子板……」
「マイ羽子板です」
 真琴の問いに答えた天野の手には、秋子さんが用意した羽子板とは違う自分専用の羽子
板が握られていた。
 しかし、どこから持って来たんだ?
「プロとしては、素人に負ける訳にはいけませんから」
「プ、プロって!?」
 天野の腕は凄まじかった。
 無論、あゆが勝てる筈もなく、勝負は天野の圧勝に終る。
 ちなみに試合中、
「えいっ!」
 ブンッ! (あゆが羽子板を振る)
 スポッ! (あゆの手から、羽子板がすっぽ抜ける)
 サッ!  (天野がすっぽ抜けた羽子板を交す)
 ガスッ! (その羽子板が、天野の後ろにいた北川の頭部にヒットする)
「ぐはぁっ!!」
 あゆの凶器攻撃の前に、北川が帰らぬ人になる。
 合掌…………。
「うぐぅ、殺してないよぉ……」
 ちょび髭を描かれたあゆが抗議の声をあげた。


 勝者:天野美汐




 〜 2回戦第1試合 〜  美坂香里 VS 相沢祐一

「そ、そんな……、こうもあっさり負けるなんて……
 奇跡は起きないから奇跡って言うのに…………」
 俺の圧倒的な力の前に、項垂れる香里。
 名雪を策略に嵌めたのはいいが、近くにこんな強敵がいるとは思わなかったのだろう。
「悪いな香里。俺のはねつきは秋子さん直伝なんだ」
 俺と名雪は幼少時代、秋子さんにはねつきの極意を習ったんだ。
 だから、名雪が強い事は知ってたし。
「安心しろ。十万は俺が頂くから」
「新婚旅行がぁ…………」
 誰と行くつもりだったんだ、おい……。


 勝者:相沢祐一




 〜 2回戦第2試合 〜  川澄舞 VS 北川潤

 これまた舞の不戦勝に終る。
 リビングで「ねこー、ねこー」と未だテレビにはまってる名雪の傍で、北川は白目を向
いたままだ。
 当たり具合が、ベストポジションだったからな。
 しかも、一撃必殺!
 さすがだな、あゆ。
「だから殺してないってば!」


 勝者:川澄舞




 〜 2回戦第3試合 〜  天野美汐 VS 水瀬秋子

「伝説のはねつきチャンプの貴方を倒す時が来ました……」
「ふふふっ、貴方の事は風の噂で耳にしてるわ」
 それぞれマイ羽子板を手に闘志を燃やす二人。
 俺は知っている……。
 かつて秋子さんが、はねつき界の頂点に立っていた事を。
 そして、天野が第一線を退いた秋子さんに代わり、頂点に立った事も知っている。
 実力伯仲――
 まさにその言葉の通りの戦いになった。
 ラリーが何回も続き、中々決着がつかない。
 だけど、必死の天野に対して、秋子さんは楽しんでるような感じがした。
 そして数時間後――


「私では越える事は出来ないのでしょうか……」
「美汐ちゃん、貴方はまだ若いから、まだまだ強くなれますよ」
「秋子さん……」
 二人の熱き戦いが終る。
 やはり、秋子さんの強さは伝説的だった。
「あ、でも墨はお約束ですから」
 何故か楽しそうに天野の顔に墨を塗る秋子さんだった。


 勝者:水瀬秋子




 〜 準決勝第1試合 〜  倉田佐祐理 VS 相沢祐一

「ゴメン、佐祐理さん……俺は勝ちたい人がいるんだ。だから、佐祐理さんにどうしても
勝たなきゃいけなかったんだ……」
 俺は佐祐理さんに勝利した。
 舞の妨害(消化器攻撃等)で苦戦はしたが。
「いいんですよ、祐一さん。手を抜かずに戦ってくれて、佐祐理は本望ですよ」
 そう言って微笑んでくれる佐祐理さんを見て、俺は罪悪感に捕らわれる。
 だって……
「本当に墨塗らないとダメ?」
「負けた皆も塗られてるんだから、特別扱いは駄目だよっ」
 ちょび髭付きあゆが抗議の声をあげる。
「それなら、俺の後ろで剣を構えている奴を何とかしてくれ」
「うぐぅ……それは、難しいよ……」
「佐祐理を傷物にしたら、許さないから!」


 その後、とりあえず佐祐理さんの頬に×印を描いておいた。
 舞の攻撃がいつ飛んでくるかが恐かったけどな。


 勝者:相沢祐一




 〜 準決勝第2試合 〜  川澄舞 VS 水瀬秋子

 実はこれが初の実戦となる舞。
 その相手は、天野をも破った伝説のプレイヤー秋子さんだ。分が悪すぎる。
 しかし、予想とは裏腹に、舞は善戦をしていた。
「……私は、羽を打つ物だから」
「そのフォーム、そして川澄の姓……もしかして舞ちゃんのお母さん名前、川澄彩子?」
「はちみつクマさん」
「そう……やっぱり……」
 川澄彩子……?
 確か、秋子さんの永遠のライバルと言われながらも、身体が弱い所為で早くからはねつ
き界から姿を消したと言われる人物だ。
 舞のお母さんだったのか……
「懐かしいわね。あの頃を思い出すわ……」
 秋子さんの顔に笑みが零れる。
 そして――
「本気でいくわよ」


 ここに伝説のはねつき人が再臨した――


 勝者:水瀬秋子




 〜 決勝 〜  相沢祐一 VS 水瀬秋子

「祐一さん、遂にここまで来ましたね……」
「秋子さんにはねつきを教わって7年……やっと、戦う機会が来ました」
 俺は、自分の部屋に隠していた羽子板を取り出した。
「それは姉さんの羽子板……」
「母さんから譲り受けたんです。母さんの後継者の証として」
 母さんは話してくれた。
 かつて、秋子さんにはねつきを教えたのは自分であり、自分は決して表舞台に立つ事は
なかった事を。
 思い出す、あの特訓の日々を――――
「祐一くん、どうしたの? 顔が真っ青だよ」
「……いや、余りにも思い出したくない過去を思い出してたんだ」
 一瞬、吐きそうになったぞ…………
 改めて、母さんから受け継いだ羽子板を握り直す。
「うぐぅ、祐一くんと秋子さん、どっちを応援したらいいんだろう?」
 あゆが俺と秋子さんの顔を交互に見て涙目になっている。
「決まってるわよ! 祐一の負ける所が見たいから、真琴は秋子さんの応援!」
「そうよね。巧い事を隠してたから、その報いは受けてもらいたいわね」
「そうだ、そうだ! 汚いぞ、相沢っ!!」
「秋子さんはこの私が倒したいので、相沢さんには負けて貰わないと……」
 真琴、香里、北川、天野は秋子さんの応援についた。
「私は何時でも祐一さんの味方ですから」
「佐祐理達もそうですよ。ねっ、舞?」
「はちみつクマさん」
 栞、佐祐理さん、舞は俺側の応援らしい。
「うーん、私もあゆちゃんと一緒で迷うよ」
 やっと戻って来た名雪が、あゆと同じ様に、俺と秋子さんを見比べる。
「うん、私は祐一の応援をするよ」
「じゃあ、ボクは秋子さんの応援をするよ」
 これで名雪が俺側、あゆが秋子さんの応援に付いた。
「それでは始めましょうか?」
「はい、そうですね」
 羽子板を持つ手に力を込めた。
「最初から本気でいきますよ、秋子さん!!」


 やはり本気になった秋子さんは強かった。
 舞と戦った時でも、恐らく力をある程度抑えていたのだろう。
 羽根を返すだけで精一杯だ。
 それでも、俺は勝ちたかった。
「ギャラクティカマグナムッ!!」
「甘いですよ、祐一さん。重破弾っ!」
「まだまだっ! 真空波動球!!」
「奥義! 燕返し!」
 既に奥義の連続だった。
「でも、どこかで聞いた事があるような技よね」
 そんな香里のツッコミも耳には届かなかった。





 空が茜色に染まる頃、長かった戦いは終焉を迎えた。
「秘技! 海老ぞりアタック!!」
 バシッ!!
「しまったぁぁ!」
 秋子さんが打った羽根を俺は取る事が出来なかった。
 この瞬間、秋子さんの優勝が決定した。
 その場にいた全員が、俺と秋子さんの戦いに、惜しみない拍手を送ってくれる。
 だけど俺は、悔しさの余り、地面に手を付いて項垂れていた。
「祐一はよく頑張ったよ」
「だけど俺は、どうしても勝ちたかったんだよ……」
 名雪の慰めの声も、俺には届かなかった。
 そんな俺の肩に、秋子さんがそっと手を置いてくれた。
「祐一さん、本当に強くなったわね」
「秋子さん…………」
 俺が顔を上げると――
「えいっ」
 何だか可愛い声と一緒に、俺の顔に墨を塗ってくれた。
「まだまだ、修業が足りませんね」
 うぐぅ。






「ってな訳で、優勝は秋子さーん」
 パチパチ。
「でも、秋子さんが優勝って事は、お年玉全部秋子さんに戻っちゃったんだね」
「私が貰っても意味がありませんから。準優勝の祐一さんにあげますよ、はい」
 なにぃぃぃぃっ!!
 俺は十万円を手に入れた!!(某RPG風に)
 そして同時に悲鳴に似た声が上がる。
「「「えぇぇっ!!」」」
「祐一、ずーるーいーっ! ずーるーいーっ!」
「うぐぅ、祐一くん……」
「だぁっ! 服を引っ張るな! ちゃんと好きな物奢ってやるから!」
「本当、祐一くん?」
「……ただし、俺を応援してくれた名雪と栞、それに舞と佐祐理さんに限るけどな」
「ま、真琴は心の中で、ずっと祐一を応援してたよっ!」
「ボクもだよっ」
「嘘つけ」
 ぺしっ! ぺしっ!
「あうーっ!」
「うぐぅ!」
「それじゃあ折角ですから、私を応援してくれた皆には、を残念賞をあげますね」
 秋子さんが、いつの間に用意したのか、人数分のラッピングされた箱を持って来た。
 ……
 …………
 ………………なーんか、いやな予感がする。
「……祐一、何だかいやな予感がするよ」
「……お前もか?」
「うん。この場合のお約束だと……」
 アレか、やっぱり?
「名雪、目標地点は商店街の百花屋。総員、退避用意」
「了解だよっ」
 俺と名雪がコソコソ話している間、あゆ達は箱を受け取っていた。
「これ、開けてもいいかな?」
「ええ、どうぞ」
 ああっ、秋子さんの顔には満面の笑みがっ!!
 間違いない!
 箱の中みは、アレだ、アレ!
「秋子さんっ!! 俺達ちょっと出かけてきます! 行くぞ、名雪!」
「うんっ!」
 俺は舞と佐祐理さん、名雪は栞の手引いて一目散に駆け出した。
 後ろから聞こえてくる声を完全に無視して。
「はぇぇぇ〜、どうしたんですか、一体?」
「……祐一、痛い」
「いいから逃げるんだっ!」
「お、お姉ちゃん達を置いてきましたけど、いいんですか?」
「巻き添えを食らいたくないからなっ!」
「逃げるんだよぉ〜」




 その後、商店街に着いた俺達の耳に、うぐーぅ、とかあうーっ、とかいう叫びが聞こえ
たり、聞こえなかったり。




 めでたし、めでたし(俺達だけ)




<終る>



感想でっす

どうも有り難う御座いました睦月さん。見て、思わず爆笑しちゃいましたですよ。
はい、これを書いている最中におバカSSも同時進行です。もうすぐお届けしますんで、首を長くして待っていて下さい。天井に届く前までには届けます(笑)

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