空飛ぶアシカと降る蝉時雨、絵に描いたねこ【後編】

 

 

 

 

 

 いつきがちゃんといい子にしてたら、お母さん、帰ってくるからね。

 

 うそつき。

 

 

 

 

 

 その机は、わたしの背には少しおおきかった。

 

 勉強したいから。

 

はじめてわたしはおとうさんにうそをついた。漢字の書き取りをする机に、はがきをのっけた。

 

 拝啓、おかあさんへ――

 

 お手紙の書きかたは、みうに教えてもらった。みうは、とってもものしり。九九を覚えるのはみかちゃんよりおそかったけど、あさがおの観察日記でほめられるのはたけしくんだけど、お手紙の書き方はみうしか知らない。

 

 意味なんてしらなかったけど、“おかあさんへ”の前に、拝啓と書いた。

 

 北海道というのは、すごいところなんですね。ほんもののきつねさんがいるって、本当ですか? そこでは、ごはんがおいしいらしいですね。“じんぎすかん”ってなんですか? みそラーメンとか、たべてみたいです。えっと、ごはんのことばっかりですね。でも、おいもも――

 

 本屋さんにおいてあった本には、たべもののことばっかり書いてあった。ほかのことをたくさん書きたかったけど、わたしのおこづかいで買えたのは、“北国、食の道”だけだった。

 

それに、表紙のカニ鍋がおいしそうだったし。

 

 そっちのごはんがおいしいって書きつづけて。

 

 ポストにいれるとき、みうにあたまをはたかれた。ちょっといたかった。ほんのすこしだけ、涙でた。ほんとにすこし。

 

 でも、書けることはたべもののことしかなかった。そう言ったら、みうはちょっと待っててと言って、走っていった。もどってきたとき、ノートをかかえてた。うちには北海道の本がたくさんあって、メモしてきたんだって。

 

 みうのおかあさんは、いろんなとこに行ったことがある。きっと、北海道も。

 

 覚えてる。

 

 せみの鳴き声がいつも聞こえてたころ、郵便局の石段にすわって、みうと手紙を書いたこと。そのときのみうは、漢字のテストでいつも百点のよっちゃんより、漢字にくわしかった。

 

 ごつごつした石段のうえで書いた、ごつごつした字。

 

 はがきを、文字で埋める。

 

 そらはあおくて、ひざしはあつい。

 

 できるだけたくさん、たくさん書きたかった。

 

 返ってくる手紙は、きっとこうだ。拝啓、いつきへ。お元気ですか? わたしは元気です。いつきは食いしん坊さんね。でも、確かにここのごはんはおいしいです。ジンギスカンというのは――です。みそラーメンも、おいもも……

 

 いつきも、一度ここに来てみませんか?

 

 わかってた。

 

 おかあさんが帰ってくることなんて、もうない。うそつきって思ったけど、言わなかった。ことばにしたら、ほんとになるから。

 

 けっきょく、ほんとになったけど。

 

 だから、たまに会いにいくくらい、いいよね。

 

 いつきも、一度ここに来てみませんか? 帰ってくる手紙の最後には、きっとこう書かれてるって信じてた。まっかなポストの口は、きっとおかあさんのいるとこまで繋がってるって、思ってた。

 

 とん、とポストは手紙を飲み込んで。

 

 三日たって、帰ってきた手紙。

 

 拝啓、いつきへ。お元気ですか? わたしは元気です。いつきは食いしん坊さんね。でも、確かにここのごはんはおいしいです。ジンギスカンというのは――です。みそラーメンも、おいもも……

 

 いつきがちゃんといい子にしてたら、お母さん、帰ってくるからね。

 

 うそつき。

 

 

 

 

 

 それでもわたしは、手紙を出しつづけた。出しつづけるしかなかった。

 

 いつも火曜日に、ポストの中を見た。

 

 三年つづいた。

 

 なつやすみの一月前。朝おきて、朝ごはんを食べて、学校にいって、帰りにみうとアイスを買いぐいして、漢字の書きとりをしてねる。

 

 おかあさんからの手紙は、こなくなった。

 

 お手紙書いてね。お母さん、かならず返事書くから。

 

 どうしておとなは、うそをつくの?

 

 

 

 

 

 夜、寝てるときに。

 

 ふくろうが鳴いてる。ほうほう、って。

 

 すごくくらい。部屋のすみには、たぶんなにかがいるんだって思った。

 

 風がふけば、ドアがきいきいいった。きっと黒い服をきただれかがやってきて、わたしをどこかにさらってく。

 

 こんなにも夜がこわかったことに、はじめて気づいた。

 

 おかあさんに、あいたい。

 

 おとうさんに、そういった。

 

 はちの巣をまちがってこわしたときみたいな顔を、おとうさんはした。

 

 首の裏側のあたりが、すこし熱かった。

 

なつのせいだ。

 

 どうしてそんなかおするの。わたし、おかあさんにあいたい。なんでおとうさんは、あのときおかあさんに、もうだめだなんていったの? わたしは、ずっとおとうさんとおかあさんといっしょにいたかったのに。どっちがいなくなってもいやだったのに。ねぇ、どうして、どうして? そこのおんなのひと、すきだったの? わたしがそのひときらいっていっても、いっしょにいたい? こたえて、こた

 

 ふくろうとせみは、歌ってる。

 

 テーブルのうえ。コップの中の氷が、からんってなった。

 

 ほっぺた、いたい。

 

 なにをされたかなんて、最後までわからなかった。

 

 ただ、おとうさんは、いった。

 

 おかあさんなら、ここにいるだろう。

 

 いない。そんなの、いない。

 

 居間の青いカーテンが二年目だって知ってるし、テーブルのうえにあるのがおさけだっていうのもわかる。そとでないてるのは、ひぐらしとふくろう。

 

 おとうさんのとなりに立ってるのは、おんなのひと。

 

 おかあさんなんて、どこにもいない。

 

 どうしておとなは、うそをつくの?

 

 しね。

 

 ほんとは、そういいたかった。けど、口にだしたらほんとのことになる気がした。だから、いえなかった。

 

 だから、なにもいわないで、出てった。

 

 まちなさい、ってどなりごえ。ドアに手をかけたところで、肩をつかまれて。

 

 はじめてわたしは、おとうさんをこわいって思った。

 

 あれは、三月だった。学校でくばられたプリント。最近変質者が出るので、気をつけましょう。路地裏には立ち入らず、なるべくひとりで下校するのはやめて、友達と帰るように。

 

変なひとに会ったら、大声をあげて逃げましょう。

 

 またおとうさんは、はちの巣をまちがってこわしたときみたいな顔をした。

 

 

 

 

 

 おととしのなつ。

 

 どうしてもせみがうるさくて。

 

 いっぴきだけ、空きびんに閉じこめた。あいかわらず、せみの鳴きごえはうるさかったけど、すこしだけしずかになった気がした。

 

 つぎの木曜になって。

 

 びんのなかをのぞいたら、せみはうごかなくなってた。

 

 みうは、せみは成虫になったら一週間か二週間くらいしか生きられないんだって教えてくれた。

 

 一週間。

 

 その年、わたしは虫とりをしなかった。去年も、しなかった。

 

 ごめんなさい。

 

 

 

 

 

                                                                                    

 

 

 

 

 

 あおいそらなんて、だいっきらいだ。

 

 それでも七月二十三日の空は、病人の顔色みたいにすがすがしく真っ青だった。べつに御浦ながれが青い空を嫌おうと、空にとっては赤くなってやる理由にはならないのだ。そんなもんだ。

 

 正午前のあおいそらに、ニジマスが跳ねた。

 

「さんびきめー」

 

 宿六おやじが酔っ払って女房に手を上げるみたいな乱暴な手つきで、西島はポリバケツに尊い命を放り込んだ。ぼくは腹が立った。骨が折れてたりなんかしたら、刺身にするとき下ろすのが難しいし、身が崩れると味も落ちる。

 

「いちいち数えるなよ、みっともない」

 

「うっせーな、一匹も釣れてねぇからってひがむなよ」

 

 西島は、それだけで六年生まで一歩後ろに下がりそうなくらい人の悪い笑い顔をした。

 

 ぼくは、ふんと凡人らしいふくれっ面をして指先に集中力を傾倒した。けれど手ごたえは返ってこない。

 

 なつのひかりと、西島の笑顔は、まぶしい。

 

 別に比喩とかじゃない。汗がてらてら光って、まぶしい。きっとぼくも、まぶしい。

 

 去年の辰野湖は商店街より人が多くて、今年の辰野湖は開拓時代のアメリカの荒野よりがらがら。あと数年もすればぼくらにも価値があったろう青春の冊子が落ちてるし、さっき湖の反対側の茂みに入っていったのはもしかしたらいつぞやの高校生かもしれないし、“ごみを捨てるな”の看板の下にシケモクと半分残ったコンビニ弁当。湖面では、フナが踊る。

 

ぼくと西島は、マイペースだった。クラスの男子が必ず一枚は遊戯王のカードを持ってたとき、ぼくらはマジック・ザ・ギャザリングをやってたし、ワールドカップの時期にグレイシー柔術の妙技を研究してた。

 

 ぼくらは天邪鬼というわけじゃなかった。ただ、バスケがはやってる時にドリブルの練習をしても仲間に入れてもらえないのを知ってただけだった。

 

 小学四年生。

 

 存外微妙な時期である。このくらいのころに、男と女の間に分かりやすいほど高く、硬い壁ができる。男子はおんなとなんかあそんでられっかよーとかなんとか言って、休み時間にはバスケやらサッカーやらをしてる。女子としてもそんなことを言われては、なによなによなんなのよいいわよあんたらとなんかあそんでらんないわよ。そうしてると、自然に溝ができるものだ。

 

 インドアは女子、アウトドアは男子と、ここに見事な棲み分けが完成する。

 

 そんな中で、ぼくと西島は教室から出ない。二時間目の普通より十分長い休み時間も、昼休みも。

 

 ぼくの一学期は、前から四番目で左から二番目の席で“銀河鉄道の夜”を読むことから始まって、前から五番目で左から四番目の席で“アルジャーノンに花束を”を読んで終わった。

 

 西島は、教室のど真ん中で羽賀と吉村と一緒に、折り紙をしていた。教室にいる男子は、ぼくと西島だけ。

 

 信じられないことに西島は、将来杯を受けることを約束されたみたいなガラの悪い男のくせに、自分はフェミニストだと言い切るのだ。フェミニストという言葉は、日本とアメリカでまったく意味が違ってくるので面倒だが、西島のは日本的なフェミだ。

 

 嘘じゃ、ない。

 

 実際に羽賀と吉村をはじめとして、数人の女子はあたしにしくんのことすきーとえらくいい笑顔をするし、西島は一組の河上の唇がミント味だってことを知ってる。

 

 男は、そんな西島のことをよく思っていない。ひがみなのか、野次馬根性なのかは知らないけど。とまれかくまれ東西南北、西島の踏む道にひやかしありだ。

 

 西島いわく、あんなだせーはなたれがきどもとなんかやってられっかよ。

 

 強がり。

 

 七月二十二日の空に、今度はヤマメが跳んだ。

 

「十夜となんかあったか」

 

 左の手から竿がすっぽ抜けた。

 

「わわわわわぁっ」

 

 右の手が竿を拾い、5980円税込みが哀れにも湖底に没するのを防いだ。

 

 何食わぬ顔で西島は、ヤマメを釣り上げてバケツに放り込んでる。

 

「そうかなんかあったんだなうんうんおにーさんはそうおもってたぞ」

 

 西島は、中学生ですら係わり合いになるのをやめたくなるくらいに狡猾な笑い顔をした。

 

 それでなにがあった言ってみなさい、わーわーなんでもないなんでもないなんでもない、だいじょうぶだれにも言わないから言わないから、そんなの信じられるかきっと明日には羽賀と吉村あたりにはおんなのてきおんなのてきとかすれ違ったら言われるんだそうに決まってる、なにっそんな女の敵とか言われるようなことしたのか、いやっ違う違うええとたぶんちがう、てめぇ許さねぇぞこらはけっはけっ十夜になにしたんだはけ――っ!

 

 西島は、ヤクザみたいにガラの悪い男であり、見ためどおりに喧嘩も強い。

 

 コブラツイストのあたりで、洗いざらい白状した。夏の暑苦しさと体臭に、ぼくは負けた。

 

 

 

 

 

 ふーん。

 

 それだけ。西島はぼくの懺悔じみた告白を、それだけで切って捨てた。

 

 なにを考えてるんだこの男は。お前がぼくにかけた技をもう忘れたか。チキン・ウィング・フェイスロックにインディアン・デスロック。おまけにあの恐怖のコブラツイストである。関節技の恐怖と、お前のわきの匂いをちゃんと自覚しろ。ドリアンはフルーツの王様でアイスみたいな味がするらしくて酒と一緒にはらに入れると内臓で異常発酵して胃が破裂するらしくて。

 

「うげっ」

 

「なんだお前、その思い出したくないものをまちがって思い出しておとーさんおかーさんどーしてぼくを生んだんですかなツラは」

 

 なつのかぜは、うまい。

 

 まぁいいや、と西島はまた竿に手をかけて、ミミズの子供みたいなイソメを針に突き刺した。それは、ロードス島で串刺しにされたらしいとある英雄の姿を思わせたりもした。

 

 英雄は、湖面に消えた。

 

 ぽちゃん。

 

「ほら、お前も釣れよ。三匹じゃ育ち盛りの少年二人のハラにゃ足りねー」

 

 確かに。

 

 太陽は、ずっと見上げてれば首が痛くなること請け合いな角度まで昇っていた。

 

 ぽちゃん。

 

 波紋の広がるさらに向こうにはいつか見たかもしれない高校生カップルがいるに違いなく、あと二年もすればぼくらはそれに憧れてて、しかしコンビニから決死の覚悟で買ってきたか、もしくはおもわぬ幸運で田んぼから拾った青春の欠片をここで読みふけっているに決まってる。タバコをやめられるか否かは、そのときになってみないと分からない。

 

 けど。

 

42日の夏休みが、そこにたどり着くまでに二回もある。

 

 どっか木陰に行きたくなって、ぼくは西島に声をかけようと

 

「あのな」

 

 まったくの不意打ちだった。

 

 西島の目は、湖に落ちた英雄の残滓を見つめてる。

 

「おれの地区の登校班にさ、小金井ってすっげーやなやつがいるんだよ」

 

 そいつなら知ってる。四歳年上の兄貴がいて、それをネタにたまに脅しをかける。喧嘩になればご飯に付け合せた納豆のように粘っこく当たり前のようについてくる文句。にいちゃんにぶっ飛ばしてもらうぞ。

 

 でも、なんで今そんな話をふるんだろうか。

 

「んで、うちの近くの林にタケさんって呼ばれてるホームレスが住んでたんだ。ほんとの名前は知らねぇ。ボロっちい軽トラに寝泊りして、周りのみんなに気味悪がられてた」

 

 その人は知らない。

 

 なんでと聞こうとした。湖のどこかで、魚が跳ねた。

 

「俺さぁ、なんでかその小金井に嫌われててな、いっつもいじめられてたわけよ。その地区の登校班の集合場所、砂利山でさ、ほとんど毎日石投げられたね。もぉ最悪。なんで学校は登校班なんてくさったシステム作りやがったんだか。ひとりで学校行く度胸もなかったし、かといって母親に連れてってもらうのも恥ずかしかったし」

 

 にわかには信じられなかった。しかし、半分納得できるところもある。あんなだせーはなたれがきどもとなんてやってられっかよ。

 

 釣り糸が、お日様に透けた。

 

「ちょうど三年くらいまえだったかな。ある日、決心したんよ。今日はやり返そう、って」

 

 芝の感触が、尻に刺さる。

 

「投げられた石拾って、投げ返した。どうなったと思う?」

 

 無論、小金井は泣きじゃくってごめんなさいもうしませんと言い、それで西島は勘弁してやって後はみんな仲良くハッピー・エンド。世界は愛でできてるのです。人類の平和よ、永遠なれ。

 

「まぁ、言わばリンチってやつだぁな。小金井はちびっとこめかみに血ぃ出たぐれーで泣きやがる。小金井兄はキレておれを羽交い絞め。さぁなぐれ、やりかえせ」

 

 どこかから飛んできたボールが、視界の端から逆側の端へ消えてった。すぐ隣は野球場。

 

「そこに現れたのが、タケさんだ」

 

「助けてくれたんだ」

 

「いんや」

 

 飛行機雲のわきを、ジャンボジェット機が通り過ぎていった。

 

「まぁったく逆。小金井の頭から血ぃ出てんの見て、そんで小金井兄から聞くからにうっそくせぇ説明聞いて、そのおっさん何を勘違いしたのかおれのことぶんなぐりやがった。この悪がきがとっちめてやるそこになおれーってな。ほんとわけわかんなかったぜ。おれはただ、いじめられんのがいやだっただけなのに、もう石投げられんのはやだっただけなのに、ふつうに学校行きたかっただけなのによ。とにかく泣きまくったぜー。

 

もうその状況はおれの手に負えるようなもんじゃなくなってた。ずっと続くかって思ってた。そしたら、どういうわけかやたらめかしこんだうちの母ちゃんが助けに来てな。そのとき、今日は授業参観だって思い出した。涙と鼻水まみれのくそ情けねぇ顔を、母ちゃん含めてその場にいた全員に見られてた。後にも先にも、人生最悪の日だねありゃ」

 

 慰めようかと思ったけど、何も言わなかった。まだ話は続くらしいし、そんなものをほしがってるわけじゃないだろうし。なにより、それは終わった話のようだったから。

 

「その後さ、なんと小金井のやつが引っ越して、別の地区に移ったんだ。おれはやっと平穏を手にしたってわけだな」

 

 と、西島は平穏の果てにあるらしき暴力的な笑顔を見せた。

 

「まぁ、そうなっちまうといじめられてたのも辛い過去だけど明るい未来に目を向けましょーっつうかな。喉もと過ぎれば暑さ忘れるってよく言うだろ? 忘れてたんよ。小金井とは別のクラスだし、タケさんなんてめったに顔見せねぇし」

 

「うん」

 

「けど……ありゃ町内会かなんかでバーベキューやったときかな」

 

 そのとき初めて、ついさっきまでえさ箱の中のイソメの匂いを嗅いでしかめっ面をしていた男が、いつもは見せない顔をした。

 

「いたんよ」

 

「タケさんが?」

 

「ああ。と言っても、ずーっと離れたとこにだけどな。あんな汚いナリしたおっさんが、そういうのの仲間に入れてもらえるわけなかったんだ。おれらが焼肉食ってるときに、遠くからすげぇさみしそうな目でこっち見てんのよ。食いづらかったわ。おれ、どうにもたまんなくてさ、肉もってそっち行こうとしたんだ。食いなよって言ってやりたかったんだ。そういうのってあるだろ? べつにいいことしたいとかじゃなくて、なんとなくそうしたいってやつ」

 

 いくらかは、覚えがある。でも、西島のそれみたいにちょっとしたドラマはなかった。

 

「そしたらさ、母ちゃんとか近所のおばさんにとめられた。やめろ、いくなって。まぁ、おれが殴られたってこともおれの知らないところでひと悶着あったのかも知れん。大人の間でな」

 

 “大人の間”というまでに、すこし間があった。

 

「結局おれは行かなかった。べつにそれでどうなったってわけじゃない。気づいたらタケさんはいなくなってたし、おれはその後ふつうに焼肉食って、そのあと焼きそばも食った。焼肉焼いたあとの鉄板で焼きそば作ると、ふつうのよりうまいよな」

 

「うん、うまい」

 

「そんだけの話よ。焼肉食って、そのあとふつうのよりうまい焼きそばを食った。それからタケさんには一度も会ってねぇや。うわさだと、病気になって入院してるみてーだな。この先その病院に行くかどうかはわかんねぇ。たぶん、行かない。タケさんとおれとの間におきたのは全部ちっちゃいことで、そんなのをきっかけにできるほどの度胸はねぇもん」

 

 それは、去年とはいえ、西島の中ではほこりをかぶってこんなことでもなければめったに開くこともない思い出というやつなのだろう。もう、終わったことなのだ。

 

でも、なんで今そんな話をするんだよ。

 

最後まで言わせてもらえなかった。

 

その西島の言葉は、ひとりごとなのかどうか判別が付かない。

 

「こどもがじぶんよりでっかいやつに逆らえるときってのは、数えるほどしかないと思うんだよ。要するに、おれはそのチャンスを見逃したんだ」

 

 それは、くやしいことなんだろうか。

 

 魚は、かからない。竿がとっても軽い。

 

「そりゃ仕方のねーことだと思うわけよ。たいていのやつが、そのチャンスを見逃すんだ。そのたびにおとなになってく。つまり、そこで負けちまうのは、おとなになるためには必要なことなんだ」

 

 湖から、魚は消えてしまったのだろうか。

 

「でもさ」

 

 西島は、魚のいないきらきらした湖を見ていた。

 

 ぼくは、あおいそらがだいっきらいだ。西島は、すきなのかもしれない。少なくとも、きらいにはなれないと思う。

 

「たまには勝っちまうやつがいても別にいいだろ、って。これは、そういう話」

 

 正午を知らせるベルが、うなり声のように響いた。ベルを鳴らす機械。名前は知らないけど、それがぼくらの話を聞いているのだと感じた。

 

 

 

 

 

 ただ商店街路とだけ称されるそこの終点は、閑古鳥が群れで鳴いていてたまに夢の島とか呼ばれている。大正時代を生き抜いたようなほこりまみれの本屋に、いま時代はマルチプルという世界の忠告と真っ向から反逆するねじ専門店、40がらみのあぶらぎったおっちゃんが経営する学生服店などなど。他も購買のセオリーに反逆の意図があるとしか思えないラインナップだ。

 

 大抵の買い物客は途中の分かれ道から家路につく。ここを通って帰宅する人間は数えるくらいしかない。

 

 ぼくはその、数少ない選ばれた人間だったりする。この地雷だらけの危険地帯を潜り抜ければ、すぐ家なのだ。

 

 ここには大抵、だれもいない。

 

 溶けかけたアスファルトをいつか滑るんじゃないかこれとか思いつつ歩き、途中ではさすがに聞き覚えのない演歌が聞こえ、学生服店の店長があくびをしてるのが見える。誰か水まけよとか思えど、だれも誰かがやってくれるだろうとか信じてもない理屈を並べて外に出ない。

 

 じゃりっ。

 

 溶けたアスファルトを、自分のでない靴音がえぐった。

 

「あ」

 

 声が漏れた。

 

 そらを横切ったあの白い鳥はなんだろうと思うし、ひぐらしはこの時期堰を切ったように鳴きつづける。はるか後ろ、夢の島から離れたとこでおばちゃんが水をまく。

 

 古本屋の看板の軒下をすこし離れたあたりに、いつきがいた。

 

 あの日から、いつきとは三日あってない。寝不足でずっと布団からでなかった一日目、自己嫌悪で泣きそうだった二日目、とりあえず水をかぶってみたけど途中で意味がないというか夏場は気持ちいいだけということに気づいた三日目。その後に西島から誘いの電話があって、気晴らしにでもというか、辛気臭いつらのやつにずっと居座られてたら気が滅入るという御浦家母の命令に従って釣りに出かけたのだ。三日間のどこにもいつきはいなかった。

 

 そして、今日もそうであるはずだった。

 

 なにせ、どんな顔を見せればいいのかなんて皆目見当も付かないのだ。

 

 いつきは足元の溶けて崩れたアスファルトを見ている。小さく何か声をあげようとしたりもしてしかしこちらには聞こえなくて、ゆびをいじったりつついたり

 

 唐突に。

 

「きぐうだねっ」

 

 この先にいつきのよりそうなとこは、ぼくの家しかない。

 

 夢の島には閑古鳥が群れをなしていて、いつもひとがいない。10歳の多感な少女が森鴎外やら幸田露伴やらを読むなんて教育に悪すぎる。

 

 たぶん、最初はなにがあろうと「きぐうだねっ」と言うつもりだったのだ。いつきはアドリブでなにかしようとすると十中八九コケる。

 

「そ、そうだね、きぐう……だね」

 

「うん、きぐうきぐう」

 

 勢いづいた車のように、もしくはオートで連射されるマシンガンのように声が二重三重にかぶさる。

 

「きょう宿題ぜんぶ終わったの漢字のドリルもうまったし四けたのわり算もできるようになったしあとは絵日記かくだけだしあのええとだから暇になって外にお散歩にでたらみうのことみかけてほんときぐうだよねそうだよねところでそれお魚だよね魚つりしてたんだねちゃんとつれた?」

 

「え、ああ、うん」

 

 肩に引っ掛けたクーラーボックスを昔日のように思い出す。二時まで粘って最終的には二十匹。半分はその場で焼いて食って、もう半分は山分けしてそれぞれ持って帰った。フナが三匹ヤマメが二匹。

 

 相変わらずそらは得体の知れない鳥が飛ぶし、カブトムシは安住の地を求めてさまよい書店ではカビの生えたようなばあさまが大きくあくびをする。

 

 いつきは、口数が少ないほうだ。

 

 もう全弾撃ちつくしていたのだ。いくらトリガーをひこうともえーととかうーんとかジャムるだけ。

 

 それでも、がんばってる。

 

 夢の島に、閑古鳥が鳴く。

 

「あ、あのさ」

 

 山で遭難して一週間、水も食料も尽きてどうしようもなくなったところを救助されたみたいな顔を、いつきはした。

 

「公園でもいこっか。魚、食べさせてあげるよ」

 

 リロード。

 

 うんうんいくいく。

 

 

 

 

 

 御浦家母は自然が大好きだ。

 

 よく息子を連れて裏山のほうに三泊程度のアウトドア生活をする。季節は無差別。春に月の電気代と同程度の金を競輪でスったときや、秋に食費のほとんどをヤニに代えて肺に吸い込んでしまったときなど様々だ。特に三丁目の玄人マダム吉原に国士無双でもあがられたときは、自然の空気を愛し、おおらかさを愛し、山の幸を愛する完全な自然史上主義者と化す。

 

 ちなみに、現在北東の遺跡で中学生の工作と縄文時代の埴輪の判別に精を出している御浦家父のプロポーズの言葉は、「俺の作った味噌汁を毎朝飲んでくださいっ!」だ。いや、真実かどうかまでは知らないけど。ウィットに富んだジョークかもしれないし、ありえない話というわけでもない。

 

 ぼくの特技は乾いた木なら十分かからずに火をおこせたり、釣りだったり、毒もちのキノコを判別することである。

 

 これはとある家族の実情の話。

 

「ほら、焼けたよ」

 

 ほんのり焦げ目のついた串を握り締めながら、七月二十三日の正午にむりやり水揚げされて数十秒後あえなく窒息死したヤマメに思いをはせてみる。こいつもここで人に殺されて食われるために生まれてきたんじゃない。きっと親がいて生活があって意思も命もある。

 

 しかしそれは腹に十分ものを詰め込んでる満腹感だけが言わせるもので、どうやら耐えがたいほど空腹であるらしきいつきにはデコピンひとつではじき返される。

 

 公園は四方を植林した杉の木で囲まれている。秋場、アレルギーに悩まされる世の中年たちにとってスギ花粉の結界は唯一ファンタジーの世界を体験できる場所だ。手入れを完全に放棄された芝生はところどころ虫食いみたいに土を晒しているし、そうでないところは落とした指輪を探すのを諦めたくなるくらいにはぼうぼう。やはり辰野湖同様というより世界標準でシケモクは地面の上。清掃員への悪意の具現であるドクターペッパーの空き缶。

 

 そして、看板。公園で火を扱うのはやめましょう。

 

「このフナも頃合かな」

 

 火の粉爆ぜる焚き火からもう一本串を引き抜いて、ほんの少しかじる。

 

苦い。

 

塩をふるのを忘れていた。しかもはらわた。きっと今のぼくは苦虫を噛み潰したような顔をしているのだろう。だって苦いのだ。

 

 戦場でもっとも重宝されるのはカレー粉だとかなんとか。ほんと、調味料を発明した人はえらい。

 

 ぱっぱと塩をふり、もう一回かじる。咀嚼する。あごの骨が動くストレスを、なんとなく意識する。

 

「おいしいね」

 

「うん」

 

 いつきは口の中を魚の身で一杯にしてるものだから、すこし開いたらヤマメの内臓だか筋肉だかが吹きこぼれた。

 

 なつはまだ始まったばかりで、そこらに生えてる木を蹴飛ばせばカブトムシやらクワガタやら青虫やらの夢と悪夢が落ちてくるし、セミはおれの歌を聴けと言わんばかりに鳴き続けるし、中学生カップルという数少ない選ばれた勇者は彼女の家だか彼の家だかお城のような建物だかに冒険に出かけるし、夕方になればカレーのにおいがするし

 

 OK。白状しよう。

 

 気まずい。

 

 西島あたりとケンカした次の日とはわけが違う。どちらもきっかけがケンカした当日の夜よくよく思い返してみればひどくあほらしく、なんでこんなことのためにニードロップひざ十字固めショートアームシザーズということになる。顔をあわせれば、昨日のことは忘れよう、お互いのためにと終戦協定。

 

 いつきとはケンカをしたわけじゃない。けれど、首筋にかく汗の量は同じ。

 

 もうひとりいつきがいて、そいつは後ろからぼくのことを責めるような目で見続けている。いや、後ろだけじゃない。公園をでれば四階建てのマンションがある。そこの木の影にしても小学生が隠れるスペースはある。地面に穴を掘ってるかもしれない。本物のいつきがいる正面以外のすべてから、もうひとりのいつきがぼくを責めてる。決まってる。

 

 せみがなく。

 

 なつはそれがあたりまえなのに。それをうるさいと感じる時間が過ぎていく。

 

「あのね」

 

 心臓が跳ねる。

 

「すこし、うれしかった」

 

 なにがとも聞けないぼくがいて、すぐそばの地面からミミズが顔出してあざ笑う。

 

「みう、うそつかなかったもん」

 

 いつきの眼球は、頭以外の全部が骨になったヤマメを見ていた。いつきの目は、どこかを見ていた。その背中が気になったけど、後ろに回りこめない。

 

「おとうさんみたいに、うそつかなかったもん」

 

 焚き火が、ぱちっと鳴った。

 

 いつきの家には何回かいったことがある。二階建てのサラリーマンが夢見るマイホームそのままの家で、いつきの部屋は二階、階段をのぼって左に曲がった突き当たり。看板の文句は「歯みがいたか? 忘れ物はないか? さぁ、一回目をつぶって深呼吸。がんばって思い出してみよう」とかなんとか。

 

 三日間。

 

 その部屋の鍵はかけられたままだったのだと、ふと気づいた。

 

 すこしこぼれた魚に、ありがたかってた。

 

「だから、いいよ」

 

 それでいつきの話は終わりらしかった。あとは残った魚を食べて、焚き火の始末をした。その間なにもしゃべらなかった。

 

うちによるかとも聞けたけど、いつきのお父さんが帰ってくるのはだいたい六時だ。

 

 いつきは帰り際、ぼくにまた明日も、わたしと遊んでくれる? と聞いてきた。

 

うなずいたけど。どうしてそんなことをいちいち確認しなくてはいけないのだろう。

 

 気になっていたいつきの背中が、去り際に見えた。

 

 けど、なにか、なにもかもをうまくめぐる様にしてくれるようなものはどこにも見つからなかった。疲れたような、ゆらゆらゆれて見える十歳の女の子の背中だった。

 

 かげろうを、そのとき初めて見た気がした。いままでにそれがなかったわけなんてないけど、明日になって覚えてるのは、そのときだけだと思う。

 

 両手で顔を覆ってみた。

 

 ついたため息は、ちょっと泣き声のようで、恥ずかしい。

 

「やは」

 

「…………」

 

「まってやめてキャメルクラッチはシャレにならないと思うの折れちゃう折れちゃう命に関わるぅぅぅ」

 

 この夏、痴女はめでたく出歯亀になった。昇格か降格かは知らないけど。

 

 あいも変わらずせみは鳴き、中学校近くの公園は、部活かどうか分からないけどまだまだおぼつかないサックスとトランペットの音色が聞こえる。関節なんて、折れでもしない限りそうそう音なんてたてない。

 

「あ、あの、ごめんねっ」

 

 あごが上がった状態から声を出すのは難しい。

 

「聞くつもりはなかったよ、ほんとだよ?」

 

 別に、許してやるとかそういうつもりはないけど。

 

 もしかすると酸素と腕力は大いに関係してるのかもしれない。ため息と一緒に、力が抜けた。するりと、梨の皮を切れ目からむくように腕が離れた。それは、ぼくをひどくあせらせた。大事なものを手放してしまったような気分にさせた。

 

 もう一回、ためいきをついた。

 

 太陽が沈む位置にある学校のあたりから、ブルースが聞こえる。なにかの皮肉なんだろうか。

 

「かなさんは、この町のひとじゃないですよね。この町せまいから。かなさんみたいなのがいたら絶対知ってると思うんですよ」

 

「うん。でもさ、なんか素直にうなずいたら負けっぽいねそれ」

 

 伸びきった首やら背中やらの筋をほぐしながら、名無しのひぐらしは言った。

 

 サックスとトランペットの輪に、遠慮がちなピアノが入り込んだ。

 

「……夏休みつかってさ、ちょっと無銭旅行中」

 

「失恋?」

 

「ぶー。不正解です。参加賞にぼうしあげましょー」

 

 手品?

 

 目の前で、あんまり日焼けしてない指がぱちりと鳴り、ぼくは目をつぶった。瞬きの間に、あたまに何かが乗っていた。手にとって見ると、それは猫の頭を模した帽子らしかった。

 

「正解は、ひみつです。またらいしゅー」

 

 その棒読みな口調は、なんとなく病院の心電図を連想させた。ぴー、ご臨終です。そんな感じ。

 

 なつのそらに届けとばかりにかき鳴らされた演奏が、とまった。

 

「おとなって、ずるいですよね」

 

「へ?」

 

 丸くなった瞳に、夕焼けの赤が映った。

 

「こどもより背も高いし、免許も取れるし、働けるし、いろんなこと知ってるし、金持ってるし、めったなことで泣かないし……どこにでもいけるし。なんか、ずるいですよ」

 

 三日ぶりに、空飛ぶアシカを思い出す。空飛ぶアシカはどこにでもいける。

 

「ふむ」

 

 じじくささを演出したような腕の組み方が、逆にこどもっぽい。そんな仕草で、おとなは空を見た。何かを考えているらしく、瞳に映る赤が水面みたいにゆれ

 

 ――

 

 どこかでトランペットが、調子っぱずれなラの音を出したような気がした。

 

「あのさ」

 

 大きさはべつに変わらないはずである声が、ひどく耳にうるさい。息遣いまで聞こえる距離。口臭がないのはなんとなく反則だと思った。三日前ぼくのうちで風呂に入ってから、それ以降は体を洗ったのだろうか。思考力を暴力的にぶんどるにおいだと感じた。

 

「わたしね、焚き火とかできないよ。火の起こし方、知らないもん。ガスコンロとか七輪でもないと、お魚なんて焼けないね」

 

 聞いてなかった。そのときぼくは、M78星雲のとあるクレーターだらけの惑星でウルトラの父が、喉自慢で使うみたいな鐘をハンマーで叩いてる音を聞いてた。

 

 たぶん、限界まで目を見開いてる。額にしわがよっている。

 

「扉の話、知ってる?」

 

 唇の動きが艶かしい。

 

 知らない、とぼくは答えた。アリの鳴き声を聞けるのなら、こんなものなのだろう。目をそらしたくなってちらりと見た足元にはアリの巣があり今も三匹の働きアリが出てきたところだ。けれど、鳴き声は聞こえない。

 

 目線を合わせれば、話し声は聞こえる。

 

「扉があります。形はわかりません。色も知りません。大きさも測れない。いろんなひとがその扉の前に立って、そのまま何もしないでどこかに行きます。鍵がかかっていると思っているからです。でも実は、鍵なんてかかってないのです。そこはこの世のどんな扉よりも簡単に開くのです。誰も、そのことを知らなかっただけです」

 

 そのときぼくは、思った。

 

 きっとこの話は、どこかで誰かが言った話として思い出すだろうと。

 

 距離が開く。

 

 なつの、つめたいかぜがかおにかかる。

 

「がんばれ、ながれちゃん」

 

 と、ひぐらし女は握りこぶしに親指を立てて笑った。すこし前やってた特撮の決めポーズだなぁとか気づくくらいには、ぼくは冷静だった。

 

「そりではーっ、少佐は帰るのでありますっ」

 

 握りこぶしをおかしな形の敬礼に変えて。

 

「あとねっ、こんどあのこと会うときは、その帽子かぶってくといいよ」

 

 予言めいた言葉を置いていって。

 

 じゃあねながれちゃん、またあそぼーねーっ。

 

 また同じ台詞を残して、そいつはなつのそらを走り出した。昨日の、耳に残った残響を思い出す。

 

 うんっ、またあそぼーっ。

 

 今度は、ぼくは大声でその残響を打ち消した。

 

 トランペットとサックスと遠慮がちなピアノが、さっきよりすこし派手なジャズの演奏を始めた。ぼくは猫の帽子を手に持っている。

 

 

 

 

 

 お隣のどら息子は珍しくもビートルズを聞いていた。ALL NEED IS LOVE.みんな愛を欲している。

 

 もしかして、彼女いないのか?

 

 そんなしみったれた疑問は夕暮れに消え、カラスに一笑される。ぼくは背中にポール・マッカートニーの歌声を聞きながら、隣の味噌汁のにおいをかぎつつそういやお腹すいたなってさっき食ったばっかりやんいいんだよ育ち盛りなんだよていうかなんで関西弁やねんお前もやがなあんたとはもうやってられんわ

 

 ぼくは、家のドアをくぐった。ぼくの家の、はずだ。

 

引き戸からぼくと入れ替わりに猫が出て行く。一年位前から腹をすかせばどこからかうちにやってくる三毛猫アオシマ。どこか逃げるような足取りの速さが目についた。

 

ここはどこだ?

 

廊下は洪水後のように水浸し、玄関からすぐ右にある居間は、テレビには斜めになった田村正和が古畑任三郎でしたとか言う。畳には穴が開き、本棚は倒れている。最初に目に入った背表紙は「罪と罰」

 

一番納得のいく答え。

 

どうやら、ぼくのうちにテロが起きたらしい。

 

アオシマが、みゃあと鳴いた。たぶん警告。ありがとう。

 

左の部屋で、泣き声が聞こえた。周りの静寂で余計に大きく聞こえる。

 

ハロゲン親子はドイツ・エスリンゲン在住のごく一般的な父と娘。二人は何か宇宙的な理由で御浦家に瞬間移動して、宇宙的な理由でテロに出くわし、宇宙的な理由で父は腹を撃たれたが娘は無傷。どうやらわたしはもうだめみたいだ、ぱぱーぱぱー死なないでー、愛していたよサロエただひとつ気がかりなのはKGBがSKユニットを起動させるパスワードを知ってしまったことだおまえがあれを守ってくれがくっ、ぱぱーぱぱー死なないでー。

 

んなこたぁない。

 

いつの間にか切り替わった画面で、タモリが道化じみた身振りで言っていた。

 

「いたいです……」

 

「なにをしとる母」

 

 左の部屋は、たしか台所。たぶん台所。

 

 踏み込んだその部屋は、屋内で台風が発生したとかそんなことしか連想させてくれない有様だった。背筋に寒気が走るような何かをつっこんだ中華鍋が床に転がってる。ミキサーが腐臭を放っているし、なぜかたぬきの置物が置いてある。

 

 ひざから下を皿の山に埋め込んだまま、母さんはめそめそしていた。

 

 ヒステリーを起こすほどのストレスを感じる生活はしていないはずなんだけど。というか、そんな事実があったなら息子に対する暴力以外の何ものでもない。

 

「あ、ながれくん……おかえりなさい」

 

「ただいま」

 

 ぐしゅぐしゅとむずがる一児の母は、ぼくに左手の人差し指を見せた。

 

「切っちゃいました」

 

 それで、大抵のことは把握できた。いや、本当のところは何もわかっていないのかもしれないけど。

 

 戻ってきたらしいアオシマが、母さんの右手が握ってる出刃包丁を見て、またみゃあと鳴き、逃げた。

 

 

 

 

 

 本人いわく――お掃除がしたかったんですよ。それと料理。

 

 あくまで、本人いわく。

 

「あいたたた」

 

「これくらいの切り傷で泣くな母」

 

「だって、痛いですよ……くすん」

 

 傷の手当を終えると――といってもただ絆創膏張っただけだけど――、母さんは傷ついてない左手でシャツの懐をまさぐり、タバコの箱を取り出し、くわえて火をつけた。気を紛らわす鎮痛剤代わりのつもりなのかもしれない。

 

 夕暮れのオレンジの中に、ちりちりと線香花火のような火がともる。

 

「だいたい、なんでまた家事なんてやろうとしたのさ」

 

「べつに……思いつきです」

 

「はぁ……気分屋なんだから……」

 

 頭痛がする。

 

 居間のテレビはさっき見たときと変わらず、斜めに傾いてバラエティ番組を流している。ひとりの芸人が、スリッパで相方にツッコミをいれたところだった。縁側ではアオシマが寝転んでる。

 

 頭の重みにまかせて、ぼくも寝転がることにした。

 

 たたみのにおい。

 

 吊られてる照明の向こう側には天井がある。すぐ真上に見えるシミが、ひどく気になった。あのシミの成分はなんだろう。水だろうか、それとも何かの薬品だろうか。

 

「ながれくん」

 

 同じ高さから、声が聞こえる。

 

「寝たばこは危ないよ」

 

「わかってますよ」

 

 わかってますよ。

 

 けれど、たばこのにおい。

 

「ながれくん」

 

 母さんは、もう一度繰り返した。

 

 太陽も半分以上地面に埋まって、あたりに影が濃くなる。不安にさせる。タンスの陰にはいたくない。いたくないんだ。

 

 そんなときに。

 

 たばこの火の明かりがわかる。

 

「ごめんね」

 

「……うん」

 

 アオシマが、みゃあと鳴いた。

 

 母は、唐突な人間だと思う。役なしを四回繰り返して、五回目にロイヤルストレートフラッシュを決める人間だと思う。

 

「十夜さんのところね……最近再婚したんです」

 

 天井のシミを、見失った。

 

 知らなかった。

 

 けれど、思い当たることはいくらかあった。あ、いつき、最近プラムのタルトの作り方覚えたんだけどさ、いつきあれ好きだって言ってたろ? うちじゃ道具が揃わなくてさ、いつきのうちってオーブンあったよね、確か。今度の日曜日なんか行っ

 

 タルトきらい。

 

 は? なに言ってるんだよ。タルト好きって言ってたの、先月の話じゃ

 

 タルト、きらいだもん。だから、みうはわたしのうちきちゃだめ。

 

 何かを我慢するとき、いつきは髪の毛の尻尾に触る。

 

「いつきちゃんは、言いたくなかったんですよ。わかりますね?」

 

「……うん」

 

 佐藤の事を思い出す。半年くらい前、両親が慰謝料をめぐって裁判を起こしていた。

 

 休み時間、佐藤の隣でおしゃべりをするやつがいなかったのを思い出す。

 

 西島が、なにかにつけかまっていた。

 

「再婚した人間にとっては、難しい時期なんですよ。後妻にとって一番おもしろくない話題は、前の奥さんの話でしょうしね。十夜さんは、いつきちゃんにその人のことを母親だって認めさせるのに必死なんでしょう」

 

「サイコン」

 

 つぶやいてみた言葉は、宇宙っぽい響きがした。宇宙は未知で、怖い。

 

「再婚なんか、しなきゃいいんだ」

 

 佐藤のことを思い出す。

 

 みんな、佐藤に触れるのを嫌がっていた。“それ”は伝染するんじゃないかって思ってたから。休みの日もゴルフに行く父親、どういうわけか不自然な時間帯に帰ってくる母親。どこかでひび割れが起きるのを、不安に思うやつはたくさんいる。

 

 母さんが隣で、笑った気がした。

 

「そうですね」

 

「母さんは、リコンしない?」

 

「さぁ。今のところはお父さんのこと、好きですしね」

 

「今のところは?」

 

「嘘つくの、嫌いなんです。先のことは誰にもわかりません。傷つきましたか?」

 

「うん」

 

 嘘つくの、嫌いなんだ。

 

 でも、仕方ないって思う。

 

 ひとりは寂しい。十夜家父にだって、おとなにだって、一人の夜がある。押しつぶされるような暗さがあるし、自分が泣いてることを知ってほしいときもある。

 

 それでも。

 

「納得なんか、できない」

 

 今度の母さんは、もっとわかりやすく笑った。

 

 そう聞こえたけど、実際に笑ったのはテレビ画面の中身だった。

 

「そうですね」

 

 また、シミが気になりだす。西島と、いつきの話を思い出す。

 

「いまのぼくは、おとなが嫌いだ」

 

 回りの音が深くなったように思う。せみの鳴き声。スピーカーから流れるギターの音色。アオシマのあくび。

 

「――まぁ、こどもとおとなは、敵同士ですからね」

 

 そんなことを言うおとなは、普通いない。

 

 けれど母さんは、そう言った。

 

「教育に正義が存在するというのは大人の欺瞞です。わたしたちはただ、子供に社会に適合する価値観を植え付けているだけで、それは必要なことであるけど正当性というものはないんです。例えば、子猫を殺した子供を折檻する大人は、毎日会社通いするその足でアリを踏み潰しています。

 

 アリと子猫と人間に、生命としての差はありますか?」

 

 どうやら話を聞いていたらしく、アオシマが物陰に隠れた。

 

「子供の価値観に照らし合わせればそれらは等価で、大人のそれによれば階級がつきます。アリのために猫を殺すのは間違いで、猫のために人を殺すのは間違いです。

 

どちらが正しいかを判断するのはわたしにはできません。けれど、子供には子供の正しいと信じる世界があるとは思います。そしてそれは、大人のそれと相反するんです。

 

こどものせかいはしかくくて、おとなのせかいはまるいんですよ」

 

話の猫が出てこなくなって安心したのか、アオシマが縁側に帰ってくる。

 

きっと母さんは、ぼくと目を合わせていたらそんなことは言わないのだろう。

 

「ながれくん」

 

「なに?」

 

「おなか、すきました」

 

「はいはい」

 

 ぼくは立ち上がった。

 

 それだけで、天井のシミは見えなくなった。台所に食材が残っているか気になる。

 

 後ろで、扇風機がうなった。

 

「わたしは、反対なんですからね」

 

 もう一度、母さんは鼻をすすった。

 

 掃除とか炊事洗濯。家事の類はみんなぼくの仕事だ。二年位前からそうしていたはずだった。もう、漂白剤はどれを使えば一番汚れが落ちるかとか、米をたくときの水加減とかを知っている。

 

 それでも、もしうちに帰ったら料理ができてたり、きれいになってたりしたら、うれしい。

 

 焦げ臭い。ぼくは、換気扇のスイッチを入れた。

 

 

 

 

 

 歩く。

 

 夜の街はそれほど静かというわけでもない。人は外にでないけれど、部屋でラジオを聴いている音がここまで届いてくるし、路地の裏には野良犬がいびきをかいてる。なにより、ふくろうとひぐらしが鳴いてる。

 

 よるのまちを、あるく。

 

 それも長くは続かないと思った。探している人は、すぐに見つかる。今なら見つけられる。そんな気がした。

 

 踏みしめるコンクリートが、じゃりっ、と音を立てた。

 

 いつもより、星が多いように思った。

 

 

 

 

 

「……ながれちゃん?」

 

 あっけにとられた目の中に、月の欠片が見える。

 

 今日会ったのと同じ場所。どうやらここをねぐらにしていたらしい。かなさんは、ランプに火を入れて、近くの木にもたれかかって本を読んでいた。どこから手に入れたのか、せんべいをぽりぽりかじってる。外じゃなければもろにどこぞの暇な女学生だ。

 

「どしたの? 遊びに来た? まぁ、夏休みだしいいと思うけど。あ、おせんべい食べる? さっき通りすがりのおばあちゃんにもらったんだけど」

 

「かなさん」

 

 砂袋を落としたような音。持ってくるときかなり重かったけど、そのわりに音は小さい。

 

 昔、鹿児島かどこかに旅行にいくときに買ってもらったスポーツバック。値段は4980円税抜き。

 

 小学生が北海道まで文無しで旅なんて、できるわけがない。この狭い国にもそれなりの危険と言うのはあり、それは相手が弱ければ弱いほど牙をむく。

 

 五年前も、そうだった。

 

 山道のコカコーラの自動販売機。

 

 飲み込むほど大きな木のうろ。

 

 茂みのおくから、笑い声。

 

 暗がりで光った目。

 

 殴られた、ほお。

 

 思い出す。五年前の夏のこと、すべてを。

 

思い出す。ぼくらはもう、知っていた。知ってしまった。

 

 ぼくらはどうしようもないほど子供で、無力だって。

 

 それは仕方のないことだ。きっと、どうしようもないことだ。

 

 けれど。

 

 いつきは、いつも人の顔色をうかがっている。

 

 気が弱くて、小さなあいつが、周りの人間に取る態度。相手がなにを嫌いか知って、それだけは絶対にしないこと。亀のように両手両足を引っ込めて一日を過ごすこと。

 

 たぶん、いつきは家で、知らない女の人に「おかあさん」と言っているのだろう。

 

 それでいつきの父さんは幸せになれると思っていたのだろう。

 

 おとなにはおとなの都合がある。十夜家父にも孤独を嫌う権利があり、人を好きになる権利がある。出会いがあったら、それを我慢する理由なんてない。

 

 けど。

 

いつきは今までわがままなんて言ったことがない。

 

おかあさんに、会いたい。

 

 山道のコカコーラの自動販売機。

 

 飲み込むほど大きな木のうろ。

 

 茂みのおくから、笑い声。 

 

 暗がりで光った目。

 

殴られた、ほお。

 

思い出す。五年前の夏のこと、すべてを。

 

まけてたまるか。

 

空飛ぶアシカはどこにでもいける。空飛ぶアシカの夢を、いまだって見ている。その背中に乗れば、空を飛べる。

 

もし空飛ぶアシカがいたら、お願いしたかった。

 

連れて行ってあげたいひとが、いるんです。

 

「お願いがあります」

 

 誰かが言ったこと。

 

扉があります。形はわかりません。色も知りません。大きさも測れない。いろんなひとがその扉の前に立って、そのまま何もしないでどこかに行きます。鍵がかかっていると思っているからです。でも実は、鍵なんてかかってないのです。そこはこの世のどんな扉よりも簡単に開くのです。誰も、そのことを知らなかっただけです。

 

 ぼくは。

 

 その扉をひらいた。

 

 

 

                                                                                    

 

 

 

 

 

 もういい、今日はあきらめよう。

 

 でも……

 

 仕方ないさ。

 

 

 

 

 

 やっとおさまった。

 

 わたしはお布団を耳まですっぽりかぶってかめみたいになりながら、ドアのむこうのはなしを聞いていた。

 

 しかたないさ。

 

 とびだして、とけいでも投げようかともおもったけど、そしたらつかまる。それに、ぺんぎんのめざまし時計はわたしのお気に入りなのだ。まくらを投げたら、寝づらくなる。たんすなんておもくて投げられないし、下じきやえんぴつを投げてもあんまり意味ないとおもう。

 

 わたしは、まくらを抱きしめてベッドにすわった。やっぱり、まくらは大事だから投げちゃだめだ。

 

 おなかすいた。

 

 さいごに口にしたのは、みうにもらったお魚。あれはあれでおいしかったけど、川魚はちっちゃいからおなかにたまらない。

 

 そう思ったら、すぐにあたまにある考えがうかんでくる。おなかがすいたときと、トイレにいきたくなったときによく考える。

 

 いつまでこうしてるつもり?

 

 いつまでもなんてむり。けれど、すなおに出ていっておとうさんごめんなさいなんてくやしすぎる。

 

 わたしはただ、おかあさんにあいたかっただけなのに。

 

 なんで、こんな目にあうんだろう。

 

 ふくろうとせみがないてる。外はこんなにもにぎやかなのに、うちの中はすごいしずかだ。さっきはノックの音やおとうさんと恵美さんの声がうるさかったのに。

 

 わたしのせいなんだろうか。

 

 わたしが出ていって、すなおにおとうさんごめんなさいっていえばそれですむことなんじゃないかっておもえる。いままでどおりわたしは恵美さんのことをおかあさんってよんで、朝の八時におきて、みうのうちにでもあそびにいく。それでいいような気がする。恵美さんはわるい人じゃない。

 

 手紙もくれなくなったおかあさんのことなんて、わすれたほうがいいんだろうか。

 

 窓から外を見た。

 

 外はあれだけうるさいのに、どこにせみやふくろうがいるのかわからない。みんな、わたしのいないところでないてる。

 

 やっぱり、いやだ。

 

 おかあさんに、会いたい。

 

 こんなときに、絵にかいたねこのことを思いだす。

 

 むかし、ねこを飼いたいっておもってたころ。おとうさんとおかあさんはゆるしてくれなかった。せめてこれくらいはって、画用紙を用意して、ねこの絵をかいた。

 

 ――なんやこれ? キングギドラか? いやゼットンか? いつきはおもろい絵ぇ描くなぁ。

 

 おかしな言葉をつかう保母さんに、からかわれたのを覚えてる。

 

 でも、わたしがかいたのはねこの絵だ。きんぐぎどらとかぜっとんなんてしらない。

 

 とっても器用で、前足をうまくつかって笛がふける。ギターだってひけるし、タキシード着てるし、人語をしゃべる。二本足で歩ける。コマンド・サンボの達人で、必殺技はモンゴリアンチョッ

 

 わたしがかいたのはねこの絵だ。だとおもう。たぶん。

 

 そんなねこが、画用紙にかいた空や海をいったりきたりする。

 

 クレヨンと、やすっぽい画用紙。冒険のにおいってこういうのだとおもった。

 

 北海道って遠いけど、そこまで行くんならできる。冒険ができる。

 

 そうおもっていたけれど。

 

 あと十日くらいでおとうさんも休みがとれるようになる。そしたら家にずっといるから、だれもいないときにお風呂にはいったりできない。そうなったら、やめようとおもう。すなおにごめんなさいっていって、おわりにしよう。

 

 あいかわらず、外はにぎやか。うらやましいな。

 

 ほらかなさん踏み台になって、なんであたしが踏み台なのよぉそーゆーのは女の子にさせちゃいけませんげどーげどー、そんなこと言ったってぼくにかなさんの体重支えられるわけないじゃないですか、あーそれすっごい失礼だよあたし友達によくスタイルいいって言われるんだからほら見れ見れ見れ、うるせーっこの痴女退治するぞこら、あいたっああっながれちゃん本性出した本性出したーっそのヤクザキックには本物のこだわりが見え隠れするよあうあうあう。

 

 しばらく、へんな音が聞こえて。

 

 そして、やんだ。

 

 そしてまた、しばらくして。

 

「いつき?」

 

 ひょこ、って窓からみうが顔をだした。

 

「みう?」

 

 つきのひかりが、みうの頭で見えない。

 

「あのさ、早く荷物まとめて」

 

「え?」

 

「おかあさんに、会いに行こう」

 

 最初は、なにを言ってるのか分からなかったけど。

 

 みうはねこの帽子をかぶってる。

 

 黒い毛皮とフェルト。こういうのが、冒険のにおいなんだとおもう。

 

 

 

 

 

     あとがき

 

 

 

 

 

ちゃーっす。centaurです。

 

どうして先週の月曜日に発表予定なのに丸々一週間オーバーしたのか、不思議でなりませんねぇ。すくなくともぼくは不思議です。みすてりー。

 

さて、ところでこの話の最大のミステリ、「この話のどこにAIRっぽさを見つけろというのか」というのをどう消化していくのか、もしくはどう諦めていくのかが目下cenの最大の課題です。

 

いま、7:3で傾いてます。どっちがとか聞いちゃいけません。

 

でも、一応の考えとしては。

 

「AIRのsummer編のストーリーをなぞり、結末をそれなりにはっぴぃ気味にしめてちょっと未完結くさかった話をまとめてしまえ」

 

 というコンセプトなんですが。

 

 はっぴぃちうてもそれなりなので、微妙。死んだりとかはしませんが。

 

 キャラも完全にオリジナルではないです。某ひぐらしも、ちょっと裏葉女史とかかわりがあったりします。

 

 いや、なぎーは出すってば(だからなんで

 

 ていうか観鈴ちんと往人さん以外は全員出したい……うん、出したいな。出せるといいな。うん、この辺ならまだ失敗したときに言い訳効きますね。

 

 それでは、3話より本格的な旅が始まります。

 

 発表日未定。受験生なんですよぅ。

 

 それでは、限りなく泥臭くかつ後味の悪さを残しつつ……さよ〜なら〜。

 

 

 

 

 

 

疾風です。centaurさん、素敵なSSをどうもありがとうございました(平伏

 

 確かに自分としては、未完結の感も否めませんでした。当時。いやほら、若かったんですよ(何

 

 こうしてほしかったとか、友達と議論したものです(何

 

 それでは、海よりもマリアナ海溝よりも深いと思いたい感謝を込めて。